町野公彦のマーケティング・ブリコラージュ

次の時代に手渡したいビジネス名言

賢者の贈り物。

「現代の賢者たちに言おう。贈りものをする人々の中で、この二人こそ「賢い人々」であったのだと。
 贈りものを与え、贈りものを受けとる人々のなかで、彼ら二人のごとき者こそが「最も賢き人々」であるのだと」。

(O・ヘンリー 「賢者の贈り物」)

 

 

クリスマスのこの時季になると、いつもあるストーリーを思い出す。


それは、小学校の教科書に載っていたO・ヘンリーの「賢者の贈り物」という、ある若く貧しい夫婦のクリスマスプレゼントをめぐる話だ。


夫は、美しい髪をもつ妻に、櫛をクリスマスプレゼントするために、自分の大切な懐中時計を売ってしまう。


一方、妻は、夫の懐中時計に合う鎖を買うため、自分の髪の毛を切って売ってしまうのだ。

 

結局のところ、お互い大事なものを手放し、かつ、使えないプレゼントをもらうことになってしまう。


この話を皮肉な話や意味のない結果に至るすれ違いの教訓と考えるか、それとも、他者のことを考え、かけがえのない何かを得た人の話と捉えるかは、個々人の気付きや解釈となる。


自分の名前を漢字で書く程度の学力しかない子供がほとんどの、私の地元の都内城北エリアの小学校で唯一ためになった授業だった。

 

良いクリスマスを!!

 

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NOZY  COFFEE

Honduras INTEGRAL EL CIPRESを飲みながら。

そして、私たちはマーケティングに帰る。

「しかし、まえがきで、デジタルマーケティングとは、「マス、リアル、ネットの3領域を全てデジタルで統合し、ユーザー導線を効果的につくっていくこと」と述べた。」

(「リアル行動ターゲティング」 横山隆治

 

 

「数億円の予算配分をマス広告を中心に数ヶ月前から計画的に行い、マス広告のヤマを設けて、ドーンと一回、広告キャンペーンを行い。その後に、定量調査を年に2回程度行って、次年度のキャンペーンを決めていく・・・・・・」。

 

こうしたやり方は、「デジタルな人たち」にとっては、「こわれゆく旧世界」のものであると認識されつつある。

 

現代のデジタル時代では、「ターゲットさえ事前に厳密には決めなくていいのではないか。なぜならば、反応があった人たちを捉えればいいのだから」・・・・とする意見をもつ人さえ存在する。

あるいは、「一回広告をやって終わりではなく、常にリアルタイムでデータを観察し、打ち手をその都度変更したり、追加したりしていくべきものである」ということが当たり前の世界である。

 

こうしてみると、「旧世界の人たち」と「デジタルな人たち」の間にギャップが生じているケースも多いのではないかという問題意識をもつ。(勿論、先進的な会社は違うのかもしれないが・・・・・・・・・・)

 

「旧世界の人たち」と「デジタルな人たち」の間にギャップがあるといっても、2つの世界に欠かせないものも確実に存在する。(広告以前の問題として。)

 

トルコ系ドイツ人であるファティ・アキンという映画監督の作品に、

「そして、私たちは愛に帰る」という映画があった。

現代のビジネスキーワードは、「そして、私たちはマーケティングに帰る」であろう。

 

つまり、「いかに顧客の立場に立って、プロダクトやサービスの満足感を高め、それを維持し続けられるかを考え続けること」、言い換えれば、顧客との協創関係のもと、どのような「カスタマーエクスペリエンス」を提供できるかが争点になる。

 

ある人はそれを「サービスデザイン」と呼び、またある人は「マーケティング」と呼ぶ。

あらためてここに帰ってくる。

 

「ここでもっとも重要なのは、タッチポイントごとのクオリティの多様さと、期待と経験の間にあるギャップです。人々が期待しているものを得られているときには、彼らはクオリティが適切であると感じているでしょう。」

(「サービスデザイン :ユーザーエクスペリエンスから事業戦略をデザインする」 アンディ・ポレイン)

 

 

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BLUE BOTTLE  COFFEE

ETHIOPIA LIMU GERAを飲みながら。

 

 

全ては、「良い問いの立て方」から。

「動物は水を好むか?」と「猫は水を好むか?」という2つの問いに対して、間違いかどうかを早く検証できる問いはどちらでしょうか?

「リーン顧客開発 ~「売れないリスク」を極小化する技術」 シンディ・アルバレス

 

 

ある内科医から、健康を考えるうえで食べることは重要であり、何を食べたかによって体調への影響に差が生じると言われたことがある。

「インプット=食べ物」によって、「アウトプット=体調」がつくられるということである。

 

ビジネスにおいても、良いアウトプットのためにはインプットが極めて重要であるものの、おざなりにされることが多い。

あまり意味のないネットのアンケート調査に多額のコストと時間を費やし、それが良いアウトプットに全くつながらない。

 

ある大手飲料メーカーの緑茶開発チームは、新商品開発にあたり、イエス、ノーで単純に回答できる調査を繰り返したところで、商品開発に真に活かせる知見は探り出せないと判断し、以下のような「問いの立て方」をしたという。

 

■急須で入れたお茶を、人、モノ、動物にたとえると何か?

■お茶を飲んだことがない外国人に急須で入れたお茶を勧める時に、どう紹介するか?

■1年間の「お茶禁止令」が国会で可決された。あなたは、国民の代表として、お茶を飲み続けるにはどのように反論するか?

■本格的なお茶と、そうでないお茶の違いは何か?

■自分が日本人であると感じる時間はどんな時か?

 

よい仕事には、必ずよい問いかけが存在するのだ。

 

「このために正式な調査をする必要はなく、顧客と話したとき、最後に「あなたはこの製品のことをどのように説明しますか?」と尋ねればいいのです。」

「リーン顧客開発 ~「売れないリスク」を極小化する技術」 シンディ・アルバレス

 

 

「何か召し上がらなくちゃいけませんよ」とパン屋は言った。

「よかったら、あたしが焼いた暖かいロールパンを食べてください。ちゃんと食べて頑張って生きていかなきゃならんのだから。こんなときには、ものを食べることです。

それはささやかなことですが、助けになります。」

「ささやかだけれど、役に立つこと」 レイモンド・カーヴァー

 

 

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OBSCURA COFFEE Ethiopiaを飲みながら。

 

 

 

「強み」が「弱み」になるとき。

すなわち、「当面の事業が成功すればするほど、知の探索をおこたりがちになり、結果として中長期的なイノベーションが停滞する」というリスクが企業組織には本質的に内在しているのです。

これが、「コンピテンシー・トラップ」と呼ばれる命題です。

(「世界の経営学者はいま何を考えているのか」 入山章栄)

 

 

ビジネスやマーケティングでは、「強み」、「弱み」という言葉が多用される。

「強み」と「弱み」は、諸刃の剣であり、相対的なものである。

例えば、リアルな既存店舗を多く抱える企業がネット通販に積極的になれない、あるいは、アナログカメラでトップメーカーだった企業がデジタルカメラ市場参入に慎重ということもある。

 

人間でたとえれば、人並みはずれて気の強い女性がいたとする。

その女性は持ち前の気の強さで様々な難局を乗り切る。仮に体調があまり良くなくとも(女性は痛みに強かったりもするので)、我慢ができてしまう。

 

しかしながら、「気の強さは、身体性を越えられない」場合もある。

つまり、いくら気が強くとも、その器である体力や健康が伴わないと、短期的にはいいかもしれないが、中長期的には破綻してしまう。

 

ビジネスにおいても、精神力が過剰に強調される。勿論、そうした気持ちの持ちようは大切なものであるものの、しっかりとしたスキルや、それを支える体格・体力がなければ、真に良い仕事につながらない。

「心技体」ということだろう。

 

いままで気の強い人たちが倒れていくのを幾度もみてきた。

身近な死を通じて、限りある生を再認識するとき、いつもあるフレーズが頭に浮かぶ。

 

「あなたの性格、精神、人生は、あなたが選んだものによって決定される。あなたの人生には恐ろしいほど多くの可能性があり、自分では制御できないが、それでもその中から選ぶ自由はとてつもなく重要だ。


遺伝子と環境の制約の中でどう生きるかは自分次第だ。

あなたが仮に遺伝的・家系的に嘘をつく傾向があったとしても、裁判で真実を言うかどうかは自分で決められる。遺伝的・文化的に恥ずかしがり屋だとしても、知らない人と友達になる場合の危険性は自分で判断できる。受け継いだ傾向や条件を超えて、自ら判断できるのだ。


世界一速い走者になれるかどうかは自分の判断だけでは決められないが、以前より速く走るという選択はできる。


不思議なことに、こうした個人の自由な選択という側面が、他人の記憶に残るあなたの思い出なのだ。

生まれや背景といった大きな鳥かごの中で、多くの現実の選択をいかにするかが、われわれ自身が誰であるかを決めている。それこそがわれわれが死んだ後も他人が語る物語だ。」

(「テクニウム 〜 テクノロジーはどこに向かうのか? 〜」 ケヴィン・ケリー)

 

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Fuglen  Bifu Gudina Co-op, Ethiopia

を飲みながら。

 

原動力は、あくなき飢餓感。

「総じて組織は、彼らのサービスに何かうまくいかない点があれば、そのことを認識はしますが、問題を明確にせず、そんなものだと受け流す傾向があります。

そのような問題に着目し、確実に対応していくことは、サービスデザイナーの役割のひとつです。」

(「THIS  IS  SERVICE  DESIGN  THINKING   領域横断アプローチによるビジネスモデル設計」 編著 マーク・スティックドーン ヤコブ・シュナイダー)

 

 

様々な人々と日々接していると、情報に対する飢餓感を持つ人と、持たざる人がいる。また、同じ情報に接したり、同じ状況に置かれていたとしても、深い問題意識を持つ人と、持たざる人がいる。

 

自分自身常に前者でいたいとずっと思ってきたし、今後もそうありたいと考えている。

 

そんなときに、日経新聞(2015年11月13日)で、米Facebookカリフォルニアに新社屋完成という記事を目にした。

これによると、同社はあえて華美な社屋をつくるのをやめたという。

Facebook利用者はいまや15億人を越えたものの、世界にはネットへのアクセスそのものさえできない人がまだ40億人いるという。

 

「この建物はとても簡素で、造りかけのようだが、わざとそうしている。足を踏み入れたとき、世界中をつなぐという自分たちの使命の達成に向けて、まだやるべきことが残っていることを感じてもらうためだ」

マーク・ザッカーバーグ

日経新聞(2015年11月13日)

 

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BLUE BOTTLE  COFFEE

ETHIOPIA LIMU GERAを飲みながら。

 

 

 

仕事に心を込めよう。

共感こそイノベーションの原動力である。

(「DIAMONDハーバードビジネスレビュー/HBRブログ」 ゲイリー・ハメル)

 

 

患者満足度において、下位グループに属していた、ある医療機関がアメリカのミシガン州にあったという。

この医療機関のCEOは、どうすれば患者のために、この病院の医療体験を改善できるだろうかと考えた。

スタッフの増員や、快適性を高める設備投資をするような多額の資金はなかった。

 

数週間にわたりこのCEOは考えた結果、ひとつの結論に至る。

 

スタッフが、仕事に職業的スキルだけでなく、「心」を持ち込んだら、どうなるだろうか?と。

 

「仕事に心を込めよう(Bring Your Heart To Work)」が合言葉になった。

患者さんの病気に対していかに良いケアを提供しているかだけでなく、患者さんそのものをいかに大切に思っているかを、しっかりと理解してもらうこと。

もっと愛情を込めることを学ぶという姿勢を医療スタッフたちはもつことになった。

 

医療スタッフには、台本や研修プログラムを提供するかわりに、ある課題を出した。

その課題とは、「患者と接する時には毎回、あなたが“誰”で、“何”をするためにそこにいるのかを伝え、心のこもった“なぜ”を分かち合うこと。

たとえば、「トムです。あなたの包帯を交換するためにここにいます。

なぜなら、お孫さんの結婚式に間に合うように、家に戻るお手伝いをしたいからです」というように。

 

心のこもった「なぜ」を表明することにポイントをおいたのだ。

 

 数ヵ月後、すべてのスタッフたちは、常に患者に心を開かなければ成功は見込めないことを理解した。たった1人でも態度の悪いスタッフがいれば、その他のスタッフの苦労も台無しになることを。

 また、同時に、病院スタッフがより多くの愛情を示せば、患者サイドは寛大さを示すようになるということもわかった。

結果的に、この医療機関の患者満足度は飛躍的に向上したという。

 

この病院のCEOはこう語る。

「満足度が改善しただけでなく、臨床面の効果もあった。我々の仕事は、命を救い、健康を増進させ、希望を取り戻すことだ。

患者の心の琴線に触れれば、そこには癒しの関係ができる。この関係性によって、患者はリラックスして、血圧が下がる。幸福感につながる神経伝達物質が活性化されるし、痛みも抑えられる。患者とケア提供者の両方にとって、良い結果になるんだ。」

 

 ゲイリーハメルいわく、

「典型的なCEOのスピーチ、あるいは従業員重視を謳うウェブサイトでは、次のような言葉が頻繁に登場する・・・執行、ソリューション、アドバンテージ、焦点、差別化、優位性。これらの言葉に落ち度があるわけではないが、人間の心の琴線に響く言葉ではない。

なぜ問題なのかといえば、人がイノベーションを起こすには、まず当人が何かに心を動かされる必要があるからだ。次に職場の同僚が、そして最終的には顧客が、やはり心を動かされる必要がある。」

資料: DIAMONDハーバードビジネスレビュー/HBRブログ」

共感こそイノベーションの原動力である

2015年11月6日

ゲイリー・ハメル ロンドン・ビジネススクール客員教授(戦略論、国際マネジメント)

 

「仕事に心を込めよう。」は、僕自身が、常に確認すべき言葉でもある。

また、このエピソードは、予算(お金)がなくても、やり方によって目的を達成できることを教えてくれた。

 

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BLUE BOTTLE  COFFEE

ETHIOPIA LIMU GERAを飲みながら。

 

 

 

私論(試論)。

 「君がやるべきことは、古い大地から新しい大地に飛び移ることだけ

なのだ。」

(「村上春樹 雑文集」 村上春樹

 

 

あくまで私論(試論)として、企業と顧客をめぐるマーケティング環境の時代変遷を便宜的に3つの時代に分けてみた。

かなり乱暴な区分であるものの、ある程度、本質的なポイントはおさえているのではないかと勝手に考えている。

 

1.機能価値の時代

2.記号価値の時代

3.体験価値の時代

 

「機能価値の時代」とは、1950年代から1970年代頃、需要が供給を上回っていた時代環境にあり、機能が実現されることにプライオリティがあった時代である。

洗濯機、クーラー、冷蔵庫、自動車といった耐久消費財が消費の主役になっていた。

 

次に、「記号価値の時代」である。

これは、バブル時期とシンクロするもので、「機能」自体が充足されてくると、顧客サイドは他者との差異を求めて、機能性から「記号性」へとその関心が移ってくる。

従って、家の中にあるモノよりも、他人に見せびらかせることが可能な自動車や、衣料品、宝飾品、外食サービス、レジャーといった分野に光があたってくる。

(学生時代、多くの人は、なぜか、報酬もないのに、胸に大きくロゴが入ったトレーナーと呼ばれるものを着用していたのだ。)

 

現在は、「体験価値の時代」である。

ネット環境の出現とその一般化によって、企業からの一方的な(中味のない)記号の提供は、すぐに見破られ、企業のコントロールが効きづらい。

こうしたことから、仮にその企業が「モノ」をつくるメーカーであっても、顧客に提供されるものは、モノではなく、「コト」=「サービス」、言い換えれば

「サービスデザイン」総体であるという考え方ができる。

これに基づいた「体験価値」こそが最も意味をもつ。

 

それでは、「体験価値」をどう高められるか?

そのために、顧客のインサイトと、行動文脈をどう捉えるかが問われている。

「共感心」をもち、顧客に寄り添える者だけが、次の価値のドアを開けられる。

 

 

クノールカップスープユーザーの考察

①圧倒的に朝食で使われている。

②朝食に「クノールカップスープ」を飲んでいる人の70%以上がパン食。

一方で、朝食がパン食の人で、スープを飲んでいる人は10%強しかいない。

③圧倒的にパンとの相性が良いのに、そのことが十分アピールできていない!

つまり、スープのユーザーはパンにつながっているが、パンのユーザーはスープにつながっていない。

つまり、片想いが続いている。

(「スープを売りたければ、パンを売れ」 山田まさる)

 

 

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BLUE BOTTLE  COFFEE

ETHIOPIA LIMU GERAを飲みながら。