取り入れられる物語を。
Eコマースでは消費者が選べないほどの店、商品があふれています。
多くの商品は、どこでも売っている潤沢品です。すると在庫の数とか、すぐ届けられるとか、安さでしか差別化できません。
その商品が「あなたにとって価値がありますよ」とアピールする力が必要です。手段のひとつは、マニアな視点から、商品の文脈を編み直すこと。つまり、「コンテンツマーケティング」です。
「日経MJ」2016年1月1日 ネットリアル革命~あふれる商品に物語を 小林弘人
今年は「物語」について真剣に考える年にしなければならない。
消費者がクライアントの「商品やサービスを自分の物語として取り入れてくれる」ようにすることを徹底して考えること。
そのためには、マニアックな視点が必要であり、それはすなわち、エクストリームユーザーを深堀していくことを同時に意味する。
「n=1だから・・・・」と、大規模サンプルのネットリーサーチのみに依存するのではなく、エクストリームユーザーにかかわっていくことが不可欠である。
とくに、エクストリームユーザーは、継続購入してくれ、「良い売上」をもたらしてくれる可能性も高いはずである。
(世の中には、「良い売上」と「悪い売上」がある。悪い売上は1回買って終わりの客で構成される売上である。)
仮に、クライアントが高級紳士靴メーカーだったとして、そのエクストリームユーザーが簡単につかまらなくとも、彼らと接している靴磨きの人に話を聴く、という方法だって考えられるのだ。
ときどき年若い読者から長い手紙をもらう。
彼らの多くは真剣に僕に向って質問する。「どうしてあなたに、私の考えていることが、そんなにありありと正確に理解できるのですか?」
こんなに年齢も離れているし、これまで生きてきた体験もぜんぜん違うはずなのに」と。
僕は答える。「それは、僕があなたの考えていることを正確に理解しているからではありません。僕はあなたのことを知りませんし、ですから当然ながら、あなたが何を考えているかだってわかりません。もし自分の気持ちを理解してもらえたと感じたとしたら、それはあなたが僕の物語を、自分の中に有効に取り入れることができたからです」と。
仮説の行方を決めるのは読者であり、作者ではない。物語とは風なのだ。
揺らされるものがあって初めて風は目に見えるものになる。
「村上春樹 雑文集 自己とは何か(あるいはおいしい牡蠣フライの食べ方」
今日も読んでいただきありがとうございます。
COFFEE VALLEY Colombiaを飲みながら。